【アスリートの練習時間】1日2時間あればほとんどの練習効果は得られる。
陸上の為末大選手が自身のブログで「練習時間について」言及している。
為末選手は、自身の競技人生を振り返って「練習時間」について次のようだった述べている。
小学生-週2日/1日90分
中学生-週5日/1日2時間
高校-週5,6日/1日2-3時間
大学-週5日/1日3-4時間
22-26才-週5,6日/1日5-6時間
27才以降-週5日/1日2-3時間
そして、各年代での練習時間について振り返り、
「1日2時間あればほとんどの練習効果は得られる」
という結論に至ったといいます。
トップアスリートでも1日2時間しか練習しない
プロの世界で活躍するアスリートであれば、長時間の練習をこなしてきたことは間違いありません。しかし、それと同時に長時間練習のデメリットについても理解しているのです。
今の時代、優れた選手でもそのスポーツにすべての時間を費やしているわけではありません。さまざまな情報に触れることができ、練習方法も進化している中で、ただ長時間の練習をこなすだけでは時間の無駄になってしまうことはわかりますね。
プロテニスプレイヤーの杉山愛さんも、現役当時「1日に2時間」しか練習しなかったそうです。他の時間は、しっかり睡眠を取り、食事を取り、イメージトレーニングに充てていたそうです。
サッカーなど他のプロスポーツ選手でも平均すると1日の練習は2時間程度です。
長時間の練習は、トレーニングの質を落とす
アスリートの練習時間が2時間程度である理由は、シンプルに「それ以上やると練習の質が落ちるから」ということです。
練習の質が落ちることは、あらゆる弊害をもたらします。
「質の悪い練習」をしてしまうと、「質の悪い動き」が身体に定着する。「質の悪い」イメージを脳に刻んでしまうのです。
イメージトレーニングの効果については近年、注目されていますが、イメトレはうまく行えば、実際の練習と同じ効果があります。心理学者のマクスウェル・マルツ氏によると「人間の脳は現実の出来事と、現実と同じくらい鮮明に描いたイメージとは区別がつかない」といいます。
つまり、「最高の自分のプレー」の脳に刻み込めば、それが実際のゲームで再現する確率は高まる。同様に、悪いプレーで何度も何度も長時間練習してしまうことは避けなければならないのです。
長時間練習によるパフォーマンス向上の弊害
為末大選手は、長時間練習の弊害について以下の2点をあげています。
1.だらだらと力を出すことを体が覚えてしまう。
2.何が重要な練習なのかを選手が意識しなくなる。
▼以下引用です。
長時間練習のパフォーマンス向上面での弊害は、だらだらと力を出すことを体が覚えてしまうことだ。
例えば生理学的には人間の無酸素運動の最大出力は6秒程度しか持たないと言われている。200mでは20秒程度走ることになるが、選手は全力を出しているように見えて微妙に98%程度の力の出し具合にコントロールする。200mと100mの専門家が微妙に分かれるのは、力の出し方に違いがあるからだ。
このように練習時間を伸ばせば、生理的限界から体がその時間に適応し始める。これを精神力でなんとかすることはできない。日本人がエンデュランス系に強く、パワー系が弱いから練習時間が延びたのか、練習時間が長いからそうなったのかはわからないが、練習時間を長くすれば、長くできる程度の出力しか出せなくなる危険性がある。ほとんどの競技において瞬間のパワーは重要なので、練習時間を短くし時間単位の出力を高める環境を作るべきだと私は考えていた。
もう一つのデメリットは、練習時間が長ければ何が重要な練習なのかを選手が意識しなくなる。例えば、上半身が重要だからと30分練習時間を伸ばしてウエイトトレーニングを入れることもできるが、それであれば上半身とハードル練習のどちらがより重要なのかという比較がなされない。制限がかかれば人は何を優先するかを考え始め、比較が始まり、より本質的に自分に必要なものを取捨選択するようになる。
身体に動きを覚えさせるような場合は、長時間の反復練習が効果的な場合もあるが、競技中に質の高いパフォーマンスを集中して発揮しなければならない競技においては、メリハリをつけた2時間程度の練習時間がよいといえるだろう。
アスリートも人生の時間は限られています。集中した質の高い練習を行い、残りの時間はリラックスして好きなことをしたり、コンディション調整に充てたり、栄養学を学ぶなど、選手として、人として向上できる時間の使い方をしましょう。