本番前のルーティーンの力。
人間の脳には「条件反射」という機能が備わっています。
条件反射とは、与えられた条件の時だけ脳細胞のネットワークにスイッチが入り、体内に生理的な変化をもたらすメカニズムです。
五郎丸選手が、キック前にポーズをとる理由
ラグビーの五郎丸選手のキック前のルーティーンが話題になりました。
あのルーティーンは、まさに「条件反射」と同じメカニズムなのです。
たとえば、梅干しと唾液の関係です。
初めて梅干しを見たとき、口の中で何の変化も起こりませんね。しかし、梅干しを口にした途端、脳は舌を通じて酸っぱさを感じ、唾液腺に指令を出して唾液を出させます。
そして、何度も梅干しを口にすると、そのうち、梅干しを見ただけで唾液が出るようになるのです。
梅干しを「見る」行為と、「唾液を分泌する作用」とは、本来何の関係もありません。
しかし、「梅干しを見て口にする」という動作を繰り返すうちに、新しい神経ネットワークが脳に形成され、無意識に唾液が出るようになるのです。そこには、意識とはまったくかけ離れた脳のメカニズムが働いています。
この梅干しと唾液の関係とまったく同じメカニズムを、ラグビーの五郎丸選手はうまく利用しているのです。
彼はキック前に、前かがみになり両手を組んで祈るようなポーズをとります。
こういった儀式を専門的には「Pre Performance Routine」といいますが、この儀式をきっちりと行うアスリートの方が、こういった行為に無頓着なアスリートよりも良質なパフォーマンスを発揮できることがスポーツ心理学の実験でも証明されています。
どんなルーティーンでもいい。
とくにどんな動作をするのが良いというわけではありません。
ホームベースを2回ほど叩く
3回素振りする
ポケットのお守りを握りしめる
、、、
など、どんな行為でもかまいません。
他人から見ればただの験担ぎに見えるかもしれませんが、そこには「自分は絶対に成功する」という暗示をかける意味もあります。
自分で決めた決まりごとをしっかりと守ることで、条件反射というメカニズムが機能し、ただのおまじない以上の大きな効果をもたらすのです。