観客の声援で、パフォーマンスは向上するのか?
週末しか走らない市民ランナーでも、マラソン大会ではスタート地点で世界有数のランナーの隣に並んだり、何千人もの観客に応援されて大都市を駆け抜ける機会があります。
たくさんの人々からの声援を浴びると、自然と前向きな気持ちになるものです。
ですが、実際に歓声にはどれほどの効果があるのでしょうか?
地元チームが有利になる理由
観客の存在がパフォーマンスに与える影響ということであれば、プロスポーツチームにおける「地元の強み」に関する研究は長年続けられています。
地元チームが有利になる理由としては、
・ホームチームに有利な判定をしがちな審判
・移動で疲れている相手チーム
・地元チームが自らの縄張りを守ろうとすることによるテストステロンの上昇
など、様々な要因が考えられます。
また、「大勢の観客が集まる」という点は、地元の強みの中でも重要な点になるかもしれません。
「観客の有無」は関係ないかもしれない。
しかし、2010年に新たな研究結果も得られています。
それは、イタリアのサッカーリーグにおいて2つの例外的な状況を対象に行われました。
1つは、地元チームがペナルティーを科せられ、無観客で行われた20試合を対象にした研究です。結果、観客の有無にかかわらず「地元の強み」は同じように存在したのです。
次に、「ACミランとインテル」、「ASローマとラツィオ」など、地元で同じ競技場をホームスタジアムとして共有している同士の試合を研究しました。
同じ競技場でも公式にはどちらかのホームゲームであるため、シーズンチケットを保有しているファンが優先されるため、観客の大半はホームチームのサポーターです。
しかし、試合ではホームの強みは全く見られませんでした。
つまり、このことから、少なくともサッカーにおいては、大きな声援よりも競技場にどれだけ慣れているかが、強みとしては大きいということです。
慣れ親しんだ場所のほうがパフォーマンスは出やすい。
これらの結果より大観衆の集まるレースでパフォーマンスが向上しないというわけではありません。けれども、多くの声援があるほどいいというわけではないのです。
大きなイベントに参加するときに感じる不安やストレスによりアドレナリンが分泌され、いつも以上の能力を引き出すこともできるのです。
しかし、たとえば地元のマラソン大会に出場する場合は、自宅があるため泊りがけになる必要はなくなります。また、日頃の練習でコースに慣れておくこともできます。
最終的には、その人にとってベストの選択をすることが大切であると言えます。
試合前に不安になるなら地元のレースが向いているでしょうし、気合を入れる手助けが必要ならば、大きな大会に出るほうが気分を高めやすくなるでしょう。
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