カーボローディングの研究の問題点。
競技の1週間前に炭水化物を枯渇させ、競技の2~3日前から炭水化物を補給するという方法(カーボローディング)の研究は、1960年代の研究が起源といわれています。
アスリートたちは、試合前に厳格な食事制限をするようになりましたが、この研究には問題点があるとの指摘もあるようです。
被験者が普段からトレーニングしているわけではなかった。
このときに行われていた研究では、被験者たちは一般の人々で、普段からトレーニングしているアスリートではありませんでした。
その後の研究では、
鍛えられている人々の場合は、日々のトレーニングで炭水化物を使い果たしてしまうため、レース前に枯渇させられたとしても、それ以上の効果は得られない。
ということが示唆されています。
炭水化物の蓄えを最大限にするほかの方法がある。
2002年のオーストラリアでの研究で、一日に体重1キロ当たり10グラムの炭水化物を摂取すれば、同日に激しい運動をしない限り炭水化物の蓄えを最大にできることがわかっています。翌日から2日間、炭水化物中心の食事を継続しても、蓄えはそれ以上増えなかったようです。
(※ただし、体重1キロあたり10グラムというのは、かなりの量だという点は押さえておかなくてはなりません。)
カーボローディングが必要ない場合
炭水化物を蓄えていても、走る速度や泳ぐ速度が速くなるわけではありませんが、少し長く速度を保つことができるようになります。
しかし、炭水化物の蓄えを完全に使い切ることのない短い運動では、カーボローディングの効果は全く得ることはできません。運動の継続時間が90分未満なら、カーボローディングの必要はないと言っていいでしょう。
個人の判断にゆだねられる。
マラソンのような長距離の場合さえ、カーボローディングの根拠は明らかではないのです。
カーボローディングの効果についての研究では、運動の間ずっと被験者に一切の炭水化物を取らせないこともあります。しかし、実際には、選手は競技中にスポーツドリンクやゼリーなどで自由に補給しています。このように炭水化物の補給が許されている場合には、カーボローディングが役に立つのかどうかは、根拠がはっきりしないのです。
また、カーボローディングのバランスをどう考えるかは、競技中に胃が炭水化物を受け付けるかどうかや、以前の試合の時にエネルギー不足になったか、、などの個人の経験に基づく判断にゆだねられます。
カーボローディングでは対応できないこと。
レースの前日の夕食などでカーボローディングするだけでは、対応できないこともあります。
グリコーゲンとして肝臓に蓄えられている炭水化物の約半分は、寝ている間に神経系に供給され消費されます。
この肝グリコーゲンは、血糖値を正常に保つ役割を果たすとともに脳などの重要な組織にエネルギーを供給していますが、筋グリコーゲンとして筋肉内に入ることはできないのです。
このため、持久系のアスリートはいくら前日の夕食までにエネルギーを蓄えていたとしても、競技の数時間前には起床し、バナナやオートミール、パン、ごはんなどの消化の良い炭水化物を食べて、グリコーゲンの蓄えをいっぱいにしておく必要があるのです。
カーボローディングをすることで得られる効果もありますが、大切なのは当日の朝やレース前の栄養補給であるということを忘れないでおきましょう。